信濃の国からこんにちは

三崎隆です。私たちは『学び合い』(二重括弧の学び合い)の考え方を大切にしています。

子どもたちの学びから学んだこと

 先日の『学び合い』ライブ出前授業は,小学校第6学年の分数の内容でした。分数で表された時間を整数で表される分に変換する内容と,整数で表された分を分数で表される時間に変換する内容です。子どもたちの学びから学んだことは,前者は全員が理解できるのですが,後者は全員が理解することが難しい内容であるということです。子どもたちにとっては,20分を1/3時間に変換する作業がやっかいなようです。我々にとっては当たり前と思っている変換作業が,子どもたちには当たり前ではなく,謎の連続であることを教えてもらいました。
 教科書には,20分を時間で表すために変換する式として,「20÷60」と何気なく,さも当たり前のように書いてあるのです。ところが,あちこちから,「20÷60が分からない」「なんで60で割るの?」「なんで?」という声が聞こえてきて,しまいには「なんで?」であふれて大合唱です。20分を時間で表すためには60で割ることは,我々にとっては当たり前の変換作業なのですが,子どもたちにとっては当たり前でないのです。
 なぜでしょうか?
 それは,そもそも割り算というのはどのような意義を持っているのかを理解していないからのように思われます。なぜ割り算が必要なのか,なぜ割り算をしなければならないのかが分からないので,「なぜ60で割らなければならないのか」が分からないのでしょう。割り算とはいったい何でしょうか?
 割り算を初めて学ぶ小学校低学年のいちばん最初に、実はその答えを学ぶのです。しかしながら,割り算の計算の方法が重視されているがために,割り算というのはどのような作業なのかについて十分に理解できていないまま先に進んでしまうことが原因です。思い出してください。一番最初の割り算は「りんごが3個あります。3人で分けたいと思います。1人何個になりますか」という文脈で学んだことを思い出していただけると思います。
 それが割り算です。つまり,「1当たりの量を求めること」が割り算なのです。1当たりの量を求めるために割り算という作業が必要であって,割り算は1当たりの量に換算したときの該当量であることさえ理解できていれば,盤石で揺らぐことはありません。
 先の問題に戻って考えれば,20分が何時間なのかを考えるときには,60分を1として考えたときに20分はいくつ分になるのかを考える必要があるわけです。そうすると,60分を1として考えるためには,20分が60分に対してどのくらいなのかを考えれば良いことになりますから,20を60で割ってみれば良いわけです。
 子どもたちの中には,60÷20を計算する子どもたちもいますが,これは20分を1として考えたときの計算作業なので,間違っているわけではなりません。その先が必要なだけです。60÷20を計算する子どもたちは,20分を1として計算していることになりますから,今度は60分を1として考えたら良いだけのことです。「今,20分を1として計算したでしょう。じゃあ,60分を1としたらいくつになるかなあ?」。20分を1としたときに60分が4になるのですから,60分を1としたら20分は1/4になるはずです。
 割り算というのは何を1として考えているのかを,順序立てて一緒に学んでいくことが必要なのではないかと思います。それを,あの日,子どもたちから学びました。算数の奥深さをはじめとして,いろいろなことを私に教えてくれる子どもたちは,とても優秀です。

追伸
 間違いに気が付きました。お詫びして訂正します。
【誤】20分を1としたときに60分が4になるのですから,60分を1としたら20分は1/4になるはずです。
【正】20分を1としたときに60分が3になるのですから,60分を1としたら20分は1/3になるはずです。