昨日,『学び合い』の授業は児童生徒全員がアウトプットの授業,普通の授業は児童生徒の多くがインプットの授業であるとお伝えしました。もう少し,ご説明します。
『学び合い』の授業は児童生徒が100%アウトプットの授業です。ところが,普通の授業,いわゆる学び合いと称する授業はそうではありません。学び合いが行われるのは小集団になって話し合いがなされるときですから,グループ学習がその主であると言っても過言ではありません。
グループ学習では,これまでの小集団の研究成果から4人編成が効果が上がることが示されています。4人編成のグループを作って話し合いをさせてみると,4人構成の集団員の中でどのようなことがおきるでしょうか。これも,すでに役割に関する研究成果が挙げられています。ご紹介します。
4人編成のグループにした場合,数ヶ月の観察を続けてみると,4人の中で自然に役割が固定されることが明らかになっています。その役割とは,
・積極的推進役(主体的にアウトプットします)
・モニター役(ときどきアウトプットします)
・記録役(インプットのみです)
・傍観役(インプットのみです)
です。つまり,グループの人数構成は4人編成がベストなのですが,その中でアウトプットして積極的に話すのは1人だけです。モニター役がときどき積極的推進役の話をモニターしながらしゃべりますから,ときどきはアウトプットすると言えるかもしれません。0.5人分のアウトプットと評価できるかもしれません。そうすると,ベストである4人編成のグループでの話し合い活動において,アウトプットする人数はおよそ1.5人となります。37.5%です。
記録役は聞き役ですから,アウトプットしません。傍観役は,傍観しているだけですからアウトプットなどすることはありません。記録役と傍観役はインプットのみです。したがって,モニター役がインプットのみでアウトプットの役割を果たさなければ,そのグループでアウトプットしているのは20%の子だけです。
グループにおいて話し合い活動をしている場合,6割から8割の子どもたちがインプットのみで,アウトプットせずに授業を終わります。分からない子が出てきて当たり前です。
ここまで話してくると,それならば,積極的推進役だけを集めたら,アウトプットだらけの授業ができるのではないかと思われることでしょう。我々もそう思いました。そこで,積極的推進役だけを集めたグループを作ってやってみました。
結果は,先の役割分担と同じになります。積極的推進役だけを集めたグループを作ったとしても,その中で,
・積極的推進役(主体的にアウトプットします)
・モニター役(ときどきアウトプットします)
・記録役(インプットのみです)
・傍観役(インプットのみです)
の役割に分かれます。役割は社会的文脈に依存するのです。20年前から,よく知られていることです。
4人編成のグループにして,(3人でも5人でも同じことです)話し合い活動をさせれば,少人数になるから話しやすくなって活発にアウトプットするであろうというように思うのが普通であろうと思われますが,そうならないのです。だから,グループにして話し合い活動をいくら促したとしても,役割が自然に分担されることから,アウトプットにならず,分からない子が出てしまうのです。
最後にもう一度。グループにして話し合い活動を促したとしても,6割から8割の子どもたちはインプットのまま終わってしまいますが,『学び合い』の授業は10割の子どもたちがアウトプットしますから分からない子が誰もいなくなります。
あなたなら,どちらの授業を選びますか?