信濃の国からこんにちは

三崎隆です。私たちは『学び合い』(二重括弧の学び合い)の考え方を大切にしています。

子どもたちから学んでほしい

 授業を構成する要素として,子ども,教師,教材の3つがあると言われます。これらの3つが相互に影響し合いながら,授業が形成されていくことになります。これらのうち,子どもの要素については,子どもが授業に持ち込む既有経験,興味・関心,学習意欲,学習能力などによって授業の構成が大きく異なってきます。しかも,これらはどのような集団に所属してるのかによって異なりますし,一人一人の子どもによっても異なります。また,学習する内容によっても異なります。授業を展開するに当たっては,このような子どもの持ち込むことの状態を十分に把握しておくことが大切になってきます。ところが,実際の学校現場に行ってみると分かりますが,子どもたち一人一人が授業に持ち込んでくる要素を十分に把握することは大変難しいことです。一人の子どもの要素を把握することでさえ難しいのに,1学級40人の子どもたちのすべてを把握しようとすることは容易ではありません。
 一方,一般に子ども,教師,教材の3つの授業構成要素のうち,まず力量が高まっていくのは教材であると言われています。その次が教師,そして子どもです。ここで言う教師は,教師が授業に持ち込む教材観,指導観,指導力などです。つまり,授業を構想し,実践しようとした場合に子どもの実態を把握できるような力量がついてくるのは,教壇に立ってから何年も経ってからということになる傾向があることが実証されています。したがって,子どもの実態を把握して,それに基づいて指導しようとすることは尚更容易ではないということです。
 学校現場で,休み時間に子どもたちとふれあいなさいとよく言われるのは,子どもたちの授業に持ち込む要素としての既有経験や興味・関心,学習意欲などの実態を少しでも把握することができる機会をたくさんもった方が良いという先達のアドバイスなのです。子どもたちと触れあう機会を多く持つことによって,授業だけでは知り得ない素直な側面を把握することが可能となる場合があります。日常生活との深いつながりを持った子どもの素材観を把握することができます。
 本学部の様々な活動は,活動を通して知らず知らずのうちに子どもの実態を把握する力量を高めてくれるところに大きな良さがあると考えられます。子どもたちの持つ教材につながる経験や知識,技能,興味・関心などを把握する貴重な機会であるととらえることができるのです。様々な活動を通して,子どもたちから多くのことを学ぶ教師であってほしいと願って止みません。2009年1月10日の再掲です。