年度末です。異動の季節です。
このたびの年度末・年度はじめで異動される方も多いことでしょう。異動するときには,赴任先の学校を教えてもらって,4月1日にその学校に行きます。あるいは直接その学校を管轄する市町村教育委員会に行きます。
なぜ,一度も行ったことのない異動先に迷うことなく行くことができるのでしょうか。
それは,その異動先の学校名を予め教えてもらっているからです。そんなことは当たり前だと言われそうです。そう,当たり前です。異動先の学校名が分からなければ,異動に同意することもできませんから,早ければ12月か1月ころには打診が始まるのでしょう。
今は素晴らしい時代になりましたから,車にはナビゲーターが付いていますし,スマホでも検索できます。学校名さえ分かっていさえすれば,迷うことなど全くなく一直線で行くことができます。
それは,その学校に行くことが4月1日の朝のゴールだからです。予めそのときのゴールが分かっていることがいかに大切か分かります。私たちが迷うことなく行動を起こすことができるのは、ゴールが分かっているからです。そのゴールに到達するためにはどうしたらよいかを事前に調べることができ,最善の方法を選択できるからです。それも自分で,です。ゴールが予め分かっていることというのはとても重要で,大切なことなのです。
授業でも同じことです。予めその日の授業のゴールが分かることというのは,子どもたちにとって極めて重要でかつ大切なことなのです。子どもたちにとって,それが分からない,あるいはあやふやだなどと言ったらどうしようもないのです。
だって,考えてみてください。
いきなり「あなたは異動です」と言われて,どこの学校かさえ教えてもらえず,とにかく異動だから異動しなさいとだけ言われて,4月1日を迎えたらどうしますか?大変なことになるはずです。
教育実習をおこなう学生たちにはよく言うことですが,「君たちの授業は,どこへ連れて行かれるか分からない飛行機にとにかく乗りなさいと言われて子どもたちが乗る授業です」。どこに行く飛行機なのかが分かっていて普通は乗りますが,どこに行くか分からない飛行機に,とにかく飛行機を用意したから乗りなさいと言われて乗りますか?
教育実習の授業だけでなく,学校現場で見る授業にはそんな授業が散見されます。教材を用意したからとにかくそれを使わせたいから使いなさいとは言いますが,それを使うことによってどこのゴールに辿り着くのかは一切伝えない授業をよく見ます。
ゴールが見えない授業というのは,どこに連れて行かれるか分からない飛行機に乗せられるようなものなのです。教師はその飛行機がどこに行くか知っていますから,何も心配はしませんが,しかし,飛び立ってから目的地のゴールを飛行中に変えてしまうような授業も散見します。
乗せられた子どもたちにとっては,いい迷惑です。
その日の授業についてもそうですが,明日の授業については尚更です。明日の授業のゴールを子どもたちに教えてあげる授業などと言うのは見たことがありません。明日の授業の内容は子どもたちに伝えますが,その内容を学ぶことでどのようなゴールに辿り着くのはを伝えることなどありません。
子どもたちにとって,明日の授業のゴールを知ることがとても大切であることを理解していないからです。明日の授業のゴールが分かれば,教師に言われなくても事前に調べてきます。
あなたが4月1日の異動先の学校を事前に調べるように。たまには,明日の授業のゴールを伝えてみてはいかがでしょうか。ゴールを事前に子どもたちに知らせることが一番重要で大切なことを分かっていただけます。
ゴールを先に伝えるのが,『学び合い』の考え方です。