信濃の国からこんにちは

三崎隆です。私たちは『学び合い』(二重括弧の学び合い)の考え方を大切にしています。

同じ人に同じことを何回聞いてもいいんだよ

 私たちは,分からない人に何かを教えてあげようとしたときに,相手の分からないことが分からないそのときにすぐに解決できるように慮って「いつでも聞いてね」と言うことがあります。『学び合い』の考え方では,分からないことを解決に導いてくれるゲート・キーパーがどこにいるのか分からない,それも分からない子にしか分からないので,子どもたちに対して「誰に聞いてもいいんだよ」と言うことがあります。どちらも,分からないことを分からなくなったそのときに解決しようとする意欲が高いうちに解決に至らせるためのとても重要で大切なことです。
 しかしながら,「何回でも聞いていいんだよ」とか「何回でも聞いてね」とか言うことはまずありません。「本当によく分かるまで聞いていいんだよ」とは言いますが,「同じ人に同じことを何回でも聞いてもいいんだよ」とはなかなか言葉に出てこないものです。その根底には,誰にでも聞いてもいいんだけど,分かりやすい説明ならば1回聞けば分かるはずだという思い込みがあるからでしょう。誰かに1回聞いて分からなければ,今度は違う人に同じことをもう1回聞けば分かるだろう,と。でも同じ人に何回でも聞いても良いことは伝える機会はなかなかありません。おそらく,子どもたちも誤解しているのでしょう。聞くのは一人に対して1回だけ,と。
 同じ人に同じことを何回も聞くことによって,聞かれる相手も「どうして分かってくれないんだろう」と考えますから,メタ認知を起こしてより良い理解が促されるのですから,良いことだらけです。分からない子も分からないことを何回も同じ人に聞くことによって,少しずつ分かる過程を上っていくでしょうし,分かっている子も分からない子から何回も同じことを聞かれることによって説明の仕方を変えていくことによってあるいは説明の仕方を変えなければダメだなあと考えて説明の仕方を工夫することによって分かり直し,つまりメタ認知が進むからです。
 「同じ人に同じことを何回でも聞いていいんだよ」という環境構成がお勧めです。それが,同じ人に何回でも聞いていいんだよの文化を創り上げていくのです。