信濃の国からこんにちは

三崎隆です。私たちは『学び合い』(二重括弧の学び合い)の考え方を大切にしています。

解決までに時間をかけたことはなかなか忘れない

 同じことをしているのに,前できたことができないことほどストレスになることはありません。それもやり方が間違っているわけではなく,マニュアルどおりに前回を同じ過程を経ているのにもかかわらず,です。何かが起きていることは分かるのですが,何が原因でその現象が現れているのかが全く分かりません。何度も挑戦してもその都度ダメで,結局,最後にはあきらめるしかありません。そのときに,助けてくれる人がいれば良いのですが,そんなタイミングよくそんな人が現れるはずもありません。だれかに聞いてみたら?とアドバイスされますが,誰に聞いたら良いのかさえ分からないのですからお手上げです。
 授業中の子どもたちもおそらくそうなのです。同じことをしているのにできないし,誰に聞いたら良いかも分からない中,それを繰り返してできない状態が続くとあきらめるのです。そして先生に怒られます。挙げ句の果てには,その教科が嫌いになるのかもしれません。もともとは好きだったのに。分からなくていらいらが募ってやがて諦めて,嫌いになる子どもたちの気持ちが分かります。
 そんなときには,自分と同じ経験をしてなんとかクリアした人が自分の周りにいてくれるととても心強い思いをします。自分はこうやったらなんとかできたけど,一緒にやってみない?と声をかけてくれたら,百人力です。まるで真っ暗なトンネルの向こうに一筋の光が突然見えてくる感じです。冒頭のような子どもたちにとっては,なんでも簡単に解決していくことのできるタイプの子どもたちから教えてもらってもダメなのです。その場は,何でもできる子がやってくれるのですぐに解決しますが,すぐに解決したことはすぐに忘れますし,2回目のときには役に立ちません。苦労して困って悩んで自分と同じ苦労をした子どもたちからなんとかやれることを一緒にやってもらえたことは,解決までに時間がかかりますが,なかなか忘れませんし,その苦労は2回目に役立ちます。
 解決までに自分の頭で良く考えますし,迷ったときには自分で判断するしかありませんから,仕方なく判断せざるを得ませんし,やるかやらないかは自分で決めるしかないので,自分で決めざるを得ない状況になります。知らず知らずのうちに,時間はかかりますが,自分で考えることになり,最終的に自分で判断して,仕方なくではありますが自分で行動を起こすことになるので力が付いていきます。