大学で授業をしていると,ほぼ完成に近い状態で目の前にやってくる学生のみなさんの考えを変えようとすることはなかなか難しいことである場面に遭遇することがあります。20年生きてきて,自分の文脈で創り上げてきた自分の価値観に基づく考え方やそれまでの学びによって構築されてきた概念を,一教師が1回きりの関わりで一瞬で変容させようとすることなどほとんど無理に近い状況であることを思い知らされます。
もちそん,それを可能にする場合も稀にありますが,ほとんどの場合は分かってくれたふりをしてそのときを通り過ぎていきます。関わりが終わればまた自らの価値観や創り上げてきた概念に基づく考え方を採用することになります。理科教育において素朴概念を科学概念に変換させることがいかに難しいかと似ているところがあります。
幼小のころから,義務教育の初期の段階から繰り返しトライ・アンド・エラーしながら修得していくことの重要さ,大切さを改めて思うところです。