信濃の国からこんにちは

三崎隆です。私たちは『学び合い』(二重括弧の学び合い)の考え方を大切にしています。

真の『学び合い』の授業

 真の『学び合い』の授業にするにはどうしたらよいかというご質問を受けることがあります。真の『学び合い』の考え方による授業の操作的な定義が難しいです。真の『学び合い』の考え方による授業になっていないと感じたら,率直にその感じたままを子どもたちに語っていただくことではないでしょうか。

(2021年9月29日再掲)
[『学び合い』教育学]『学び合い』の考え方を使った授業かどうかの判断基準
 この授業は『学び合い』の考え方を使った授業なのかと問われると,答えるのはなかなか難しいことです。現象論的には『学び合い』も学び合いも同じですから,見た目はそっくりで区別がつきません。みんなでわいわいがやがや自由に語り合っている様子が見られたとしても,厳密に言えば,それが『学び合い』の考え方による授業であるかどうかを即時的に判断することは難しいです。
 以前にも紹介しました(2018年12月2日。末尾に再掲します。)が,一つの判断基準は,経験交換ケースのカテゴリーに分類できる会話の割合が,強制ケース,無関心ケース,安易合意ケースのカテゴリーに分類できる会話の割合よりもとても多いことです。『学び合い』の考え方を使った授業であると言ったとしても,経験交換ケースのカテゴリーに分類できる会話の割合が多くないようでしたら,それは『学び合い』の考え方が共感されている授業とは言えない状況です。
 もう一つの判断の基準は,『学び合い』の考え方の場合,ゲート・キーパーの出現率が高くなります。1単位時間中に50%を超える状況になるのが特徴です。ですから,現象論的に相互作用が認められる場合でもゲート・キーパーが現れないような場合には『学び合い』の考え方であると判断するのは避けた方が良い授業と言えます。
 そして3つめの判断基準は構成員の関わりの数です。集団構成員のすべての人員がその構成員のだれかと教えたり教えられたりする会話関係を有していることを,『学び合い』の考え方に基づいて行われる授業であると判断する基準のエビデンスとしています。
 1つめは行動分析としての会話解析から把握できますし,2つめと3つめは授業後のアンケート調査から把握できます。3つを満たして初めて『学び合い』の考え方による授業といえます。

(2018年12月2日再掲)
学術的に重要な定義                                    10327723    8611246 今 今日は『学び合い』の考え方に基づいて行われる授業の操作的な定義の話題です。『学び合い』の考え方に基づいた授業を,定量的に定義することはなかなか難しいことです。査読を通らない元凶です。私が授業を見て,「これは王道の『学び合い』だ」とか,「これはなんちゃって『学び合い』だ」とか,「これは『学び合い』じゃない」とか,私にしか判断できないようですと,それは学術的になかなか高みには至りません。『学び合い』が考え方に基づいて実践される授業なので,定義はあります。しかし,それだけでは万人が見て判断できる授業にはなりません。
 そこで,過去5年間の臨床教科教育学会に掲載された『学び合い』論文を検証してみました。そうしたところ,『学び合い』の考え方による授業で典型的に現れる経験交換ケースの出現割合が1単位時間一人当たりおよそ0.3会話という数値が導き出されました。この数値が多いか少ないかは今後の検証を待たなければなりませんが,査読を通った数値なので一つの目安にはなります。判断基準の一つ目は,1単位時間一人当たりの経験交換ケースの出現数が0.3会話を超えることです。
 以前から2つの判断基準がありました。いずれも,教えてあげた人が誰か教えてくれた人がだれかを問うアンケート調査の結果から判断できる基準です。一つは関わり合いの数です。もう一つは,ゲートキーパーの出現率です。前者は,教えてあげたと言ってもらえない子ないしは教えてくれたと言ってもらえない子が一人もいない状況が生じることです。集団構成員のすべての人員がその構成員のだれかと教えたり教えられたりする会話関係を有していることを,『学び合い』の考え方に基づいて行われる授業であると判断する基準のエビデンスとしています。
 後者は,ゲートキーパー数が集団構成員の半数以上を占めることです。つまり,ゲートキーパー出現率が50%を超えることを,『学び合い』の考え方に基づいて行われる授業であると判断する基準のエビデンスとしています。以上のことから,『学び合い』の考え方に基づいて行われた授業かどうかを判断する基準は,現時点で次の3つを満たすことです。
 ①1単位時間一人当たりの経験交換ケースの出現数が0.3会話を超えること
 ②教えてあげたと言ってもらえない子ないしは教えてくれたと言ってもらえない子が一人もいない状況となること
 ③ゲートキーパー出現率が50%を超えること