信濃の国からこんにちは

三崎隆です。私たちは『学び合い』(二重括弧の学び合い)の考え方を大切にしています。

伝えてもらって伝えてあげる

 学部4年生(B4)のみなさんの卒論が終盤を迎えようとしているこの時期は,学部3年生(B3)のみなさんの卒論が始まろうとしている時期でもあります。1年の中で,卒論が重なるときです。私たちの研究室には,卒論に4つのハードルがあります。卒論のテーマを決める,学校現場で調査する,音声として録音された会話を文字にする,会話している相手を特定する,の4つです。学部4年生(B4)のみなさんが4つめのハードルを越えようとしているときに,学部3年生(B3)のみなさんは最初のハードルを乗り越えて2つめに挑戦します。
 学部3年生(B3)のみなさんが最初のハードルを乗り越えるに当たっては,先輩からの一言から良い影響を受けています。先輩の経験は貴重なアドバイスとなり励みとなります。たとえ,直接後輩たちに面と向かって言葉で語ってあげなくても,学会発表のリハーサルを通して実際にやってみせてきたこと,全体ゼミで後輩たちの前で言ったことやったこと,1.5人論文であったとしても卒論として書き残してきたこと,学会発表の原稿として綴ってきたこと,卒論発表会での発表の様子や要旨集に残したこと,などなどが形を成さずとも後輩たちに伝わります。それは数え上げられば,きりがありません。
 メンターの効果についてはよく知られています。信濃の国からこんにちはでもたびたび(7回目)取り上げて論じていることです。実証は「西川純・橋本牧・相原豊:「先輩が書いたものだよ」という一言の重み,理科の教育,51(6),64-65,2002」がしています。メンターをすることによってメンティーに効果が及び,先輩がメンターとして後輩との関係の中で共に活動することによって,後輩への効果が抜群な結果をもたらします。メンターとなる受験の先輩が今まさに立ち向かおうとする後輩たちに対して,経験という宝物を委ねようとしているのですから,計り知れない効果が期待できます。後輩たちもやがて先輩となり,後輩たちに伝えてくれます。