信濃の国からこんにちは

三崎隆です。私たちは『学び合い』(二重括弧の学び合い)の考え方を大切にしています。

目的地に向かって帰ってくるとき

 目的地に向かうときに,同じ道を帰ってくるのであるならば,帰り道のために目印となるものをポイントとなる場所に置いておくなり付けておくなりした方が良いことはよく知られていることです。小石などの目印になる小物体を定期的な間隔ごとに置いておくのも一つの方法であることは,外国の童話が教えてくれています。
 同じ道を帰ってくるなら,同じ道なんだから何もそんなことまでしなくても大丈夫であろうと思われがちですが,目的地に向かっていくときの視野に入ってくる映像と帰り道の視野に入ってくる映像は全く異なったものなので,同じ道であるとは言え,視点が異なりますから分かれ道などのポイントとなる場所を見誤ることになりかねません。
 我々が文脈に依存して状況を認知していることに依ります。簡単な曲がり角でさえ,東から西に向かっていて右折して北に向かう往路と,北から南に向かった帰り道を東に左折するのとでは,文脈が異なるので認識に大きなズレが生じて当たり前です。それは,年齢とともに発達段階が上がっていけば解決できる類いのものではありません。換言すれば,年齢には依存せず発達段階が上がらなくても文脈に依存して認識さえできるようになれば解決できるものです。
 目的地に向かうときに,ポイントとなる場所で帰り道を想定して,少しだけ振り返って復路の文脈を意図的に創り出して,その文脈を認識に導いてやるだけでもずいぶんと違ってきます。特に,初めて向かう目的地の場合,同じ道筋を戻ってくるときには効果的な手法の一つとなります。我々が文脈に依存して状況を理解し,その文脈の下でより良い力量を発揮することができるからです。