信濃の国からこんにちは

三崎隆です。私たちは『学び合い』(二重括弧の学び合い)の考え方を大切にしています。

立ち位置

 運動会を思い出してください。どの競技でも,遠くから見ていると全体がよく見えます。全体としてみるとどこがどんなふうになっているとか全体のバランスの調整の必要性とか,いろいろと見えてきます。しかし,その競技に参加しないまでも近づいてみると,自分の近くの子どもたちだけはよく見えますが,全体がどうなっているのかは分からなくなります。いわゆる,木を見て森が見えない状況です。

 『学び合い』授業では,全体を見る必要があります。どの子が誰とも話せずに困っているのか,どの子とどの子とが関わっているのか,どのグループが活発に活動していてどの子どもたちが取り残されているのかを適切に把握して,それをクラスの全員に情報として教えてあげる必要があるからです。子どもたちはその情報を基にして,グループをつくったり解消したりしながら,全員が目標達成できるためにはどうしたら良いかを考えて行動するのです。

 ですから,立ち位置は,(1)教室の中でクラス全員の活動を把握できる場所であればどこでもOKです。加えて,(2)時間経過を同時に把握できる立ち位置であれば申し分ありません。子どもたちの活動中,教師は一定の場所に留まっている必要はなく,子どもたちの活動の状況に応じて移動してOKです。四隅だけに位置取りする必要もありませんが,四隅だと子どもたちの活動を注視する上で,死角ができにくいので都合が良いのです。その意味では,死角のできない位置に立っているのがベターと言えます。

 活動中は,机間指導してもかまいません。ただし,分からなくて困っている子や気になる子のところに留まっていると,先ほどのようにクラス全体の状況を的確に把握できなくなる心配が生じます。

 ですから,机間指導したときには,(1)子どもたちと一定程度の距離を保つこと,(2)一カ所に留まらないこと,(3)教えたい気持ちをグッとこらえて,その子どもたちの様子をクラスの全員に分かるように一歩引いて情報発信すること,に心がけることです。困っている子どもたちを救う行為は,子どもたち(集団)に任せるのです。距離を保つことで,目標を終えた子の手を引っ張って無理矢理,その子たちのところに連れて行くことも避けることができます。

 つまり,個別に教えることは教師がするのではなく,集団としての子どもたちに任せるという発想の転換が必要です。