自分の文化の下で培われた文脈の中で過ごしている限り,居心地は良いものです。周りは小さいときから培ってきたなじみの深い自分の文脈ですから。食文化も衣文化も言語文化も,そして思考文化も表現文化も行動文化も,日常生活の中で培われてきた文脈です。
ともすると,あまりにも居心地が良いので,その自分の文化ないしは文化を培ってきた文脈を異なる文化や文脈を持っているまわりの人たちに薦めたり自分の文化や文脈の中へ誘ったりすることがあります。いわゆる文化,文脈の押しつけです。
そうなると,お互いにどこかぎくしゃくしてきます。周りの人たちが折り合いを付ける術を持っていてくれれば良いですが,その度合いが高じてくると,両者の間にずれが生じて,ともするとその文脈での接触を避けようとされるようになることがあります。
薦めたり誘ったりしている側にはそのことがよく分かりません。自分の文脈で培ってきた文化が自分にとって心地よいのでその心地よさを周りの人たちと共有したいと思うから,尚更のことです。あまりにも長い間,居心地の良い自分の文脈で過ごすことが多かったのかもしれません。
できることなら,自分の文脈を一度リセットするなりまわりの文脈との共通性を見出すなりしてみることができるとより良い方向を見出すことができるものと思われます。小さいときから,周りにはいろいろな文脈を持っている人たちがいてそれが当たり前であることを学ぶ機会を数多く持っていくことが肝要なのではないでしょうか。