信濃の国からこんにちは

三崎隆です。私たちは『学び合い』(二重括弧の学び合い)の考え方を大切にしています。

今日から3日間

 今日から3日間,日本科学教育学会第46回年会(全国大会)がオンラインで開催されます。科学教育に関する1年間の成果が披露されます。すでに,プログラムと論文集が公開されていますので,3日間のスケジュールに従って関心のあるものを拾い出してみましたが,やはり直接聞いてみたい内容が盛りだくさんで困ってしまいます。オンラインなので,アカウントが2つあれば同時に聞くことを可能にするかもしれません。これからの教育研究に示唆を与えてくれる宝物を探しに行ってきます。

 

分からない子が誰もいなくなる

 2010(平成22)年の1月に,「これで,分からない子が誰もいなくなる!」という本を出版しました。このスタンスは今でも変わりませんし,将来も変わることはありません。しかしながら,誰にでもその子なりその人なりの理論負荷性を持っているので,今流に言わせてもらえればバイアルがかかるので,同じアプローチや同じ情報の伝え方(説明の仕方や教え方)では「これで,分からない子が誰もいなくなる!」を達成することが困難であることには変わりありません。
 アプローチを提供するないしは情報を伝える・教える側にはその側のバイアスがかかっていますから,そのバイアスにぴったり合致するバイアスを持っている子ないしは人にはとても分かりやすいのでしょうが,そうでない,つまり提供する側・伝える側と異なるバイアスを持っている子なり人にとってはちんぷんかんぷんです。同じアプローチ・同じ説明・同じ教え方を何度繰り返されたとしても,理解に至ることはありませんし,伝えたい内容は分かりません。
 それでも,「ちゃんと説明してるのになんで分からないんだ」とか「おまえの努力不足だ」とか言われるよりも,なんとか分かってもらえるように真摯に対応してくれる方が,最終的に分からないまま終わったとしても,まだその当事者の気持ちが伝わってきてまだ救われます。そうならないように,なんとかアプローチを変えたり説明の仕方や教え方を工夫したりしながら,文脈の依存性を変換する試みをすることが,分からない子なり分からない人にとってはどれだけ有り難いことでしょう。
 つい先日も,学会の関係で分からないことがあって照会したところ,すぐに対応してくださり,私の分からなさをあっという間に解決に至らせてくれました。本当に有り難いことだと感謝しています。私でさえ,分からないことが出てきたら,分からなくなったそのときになんとかしたいものです。私が院生だった三十数年前も,分からないことが出てきたら担当の大学の先生はすぐに研究室に戻って調べてきて解決に至らせてくれました。
 学校現場でも分からないことが出てきたら,子どもたちにとってはそのときになんとかしたいものです。時が過ぎれば過ぎるほど忘れ去ってしまいます。分からなくなったそのときに,その子のバイアスに対応できるバイアスを提供してあげられる環境を構成したいものです。

 

子どもたちからの元気

 子どもたちから元気をもらいます。小学校第4学年の子どもたちと中学校第2学年の子どもたちの,いずれも理科の授業を参観する機会がありましたが,そのときのことです。いずれも,小学校と中学校の中堅どころです。校種は違えど,学びは主体的です。対話的です。そして彼らなりに深い学びを見せてくれています。はつらつとして,集中し,建設的に取り組み,協調しながら,探究が続きます。彼らを見ていると,学ぶっていいなあと改めて思います。私も,いくつになっても学びを続けます。彼らから元気をもらい,学ぶ尊さを教えてもらっています。

 

ありがとうございました。

 先日,10月末にお邪魔する予定の学校から,当日の日程が届きました。分刻みで組まれている上に,学年と学級も明示され分かりやすく示されていて嬉しく思いました。学校関係の仕事をしていると,外部から人間が訪問してくる当日の日程を決める作業はなかなか難しい調整を伴うものです。いわゆる主事訪問などは,経験のある方ならよくお分かりのことと思います。それを2ヶ月も前に調整を終えて連絡をくださるのですから,驚きます。受け取る側からすると,とても助かります。予定を立てることができますし,当日に向けた準備を余裕を持って行うことができるからです。余裕を持った業務遂行を可能とする環境構成は本当に何よりです。ご尽力くださった関係各位には心から感謝しています。

 

エラーは学んでる証拠

 仕事をしていると,特に初めて取り組む仕事の場合,どうしても分からないことが出てきます。今はとても良い時代なので,Webを検索すればおおかたのことは解決しますが,それでもローカルなことや漏洩してはならない情報を伴う作業などは検索しても解決に至ることはまずありません。エラーを起こします。
 なんとかしなければと焦って,知人にメールを発信して質問します。すぐに返信があると本当に嬉しいです。今,困っているからです。ところが,解決しません。そうなると,次の知人にまたメールを発信します。それでも解決しない場合は,また次の知人にメールを出します。そんなことはよくあります。あきらめれば,仕事が滞って周りに迷惑をかけることになりますから,諦めることはできません。分かるまで何度でもどなたにでも尋ねます。
 学校の授業では,そんなことを認めてもらえているでしょうか?そんなこと,というのはエラーを起こすことです。それも繰り返してエラーを起こすことです。いったい,何回までエラーを認めてもらえるのでしょうか?前にも書きましたが,一般的には,エラー1回でアウトではないでしょうか?『学び合い』の考え方では無制限です。エラーを繰り返しているうちに,エラーの回数を減らすことのできる術を体得できていくようになります。手段目標分析と呼ばれます。理科でエラーの回数が減ったからと言って,算数・数学で同じように減るとは限らないので難しいところです。
 エラーを起こしたとしても,それはあくまでもその子どもたちが学びの過程の一場面であることを肝要に認めてあげられるような”待ち”の気持ちを持つことができるようになるといいなあと思うところです。エラーは2回まで,などと限定すると子どもたちは萎縮しますから,何度でもエラーしていいんだよ,エラーは学んでる証拠なんだから,と言ってあげましょう。

 

資質・能力表

 小学校,中学校ともに,現在の学習指導要領が完全実施されてから1~2年が経ちます。各学校とも,各教科等において,資質・能力表を完成させているでしょうか?3年ほど前,そう現在の学習指導要領への移行がなされている時期には,各地を訪問した際には,必ずと言って良いほど,各教科等の資質・能力表について話をした経緯があります。大学の講義でも,学生のみなさまに,新しい学習指導要領が始まったら資質・能力表を現場で作って頑張るように励ましましたし,作り方も話したものです。その意味では,現在はすでにできあがった資質・能力表を基にして修正を加えながら,児童・生徒のみなさまに単位時間で身につける資質・能力を明確に打ち出しながら指導が行われていることと思われます。

 

子どもたちによる授業評価

 お邪魔する予定の『学び合い』の考え方を全校で取り組んでいる学校から,1学期に取ったというアンケートの結果が届きました。いくつもの項目がありますが,どの項目も,とてもそう思う,と,少しそう思う,を合わせると90%を超えています。子どもたちの声がそのまま反映されている結果であるだけに価値の高さを感じます。困っているお友達がいたら助けてあげますかという問いに対しては数値が高いですし,異学年の学習に対して全員が良かったと回答しています。感嘆します。大学で言えば,授業評価です。これだけ高い評価を得る背景には,日頃からの当該校のみなさまの地道な努力と継続的な実践力があってこその賜です。敬意を表します。
 自由記述を見ていくと,まず驚くのは,課題を達成したかどうかを確かめるアイディアとして人に教えてあげることを挙げている子どもたちがいることです。自らの理解の判断を的確な方法で把握する術を身につけている点は秀逸です。いろいろな人のところに行っていろいろな考えを聞くもあれば,ずっと座っていても分からないままだから自分から教えてもらうもあります。諦めず最後まで頑張るもあれば,問題を出し合うもあります。どれをとっても見事で,読みながら涙が出てきます。
 子どもたちに会えるのを楽しみにしています。