信濃の国からこんにちは

三崎隆です。私たちは『学び合い』(二重括弧の学び合い)の考え方を大切にしています。

分からない子が誰もいなくなる

 2010(平成22)年の1月に,「これで,分からない子が誰もいなくなる!」という本を出版しました。このスタンスは今でも変わりませんし,将来も変わることはありません。しかしながら,誰にでもその子なりその人なりの理論負荷性を持っているので,今流に言わせてもらえればバイアルがかかるので,同じアプローチや同じ情報の伝え方(説明の仕方や教え方)では「これで,分からない子が誰もいなくなる!」を達成することが困難であることには変わりありません。
 アプローチを提供するないしは情報を伝える・教える側にはその側のバイアスがかかっていますから,そのバイアスにぴったり合致するバイアスを持っている子ないしは人にはとても分かりやすいのでしょうが,そうでない,つまり提供する側・伝える側と異なるバイアスを持っている子なり人にとってはちんぷんかんぷんです。同じアプローチ・同じ説明・同じ教え方を何度繰り返されたとしても,理解に至ることはありませんし,伝えたい内容は分かりません。
 それでも,「ちゃんと説明してるのになんで分からないんだ」とか「おまえの努力不足だ」とか言われるよりも,なんとか分かってもらえるように真摯に対応してくれる方が,最終的に分からないまま終わったとしても,まだその当事者の気持ちが伝わってきてまだ救われます。そうならないように,なんとかアプローチを変えたり説明の仕方や教え方を工夫したりしながら,文脈の依存性を変換する試みをすることが,分からない子なり分からない人にとってはどれだけ有り難いことでしょう。
 つい先日も,学会の関係で分からないことがあって照会したところ,すぐに対応してくださり,私の分からなさをあっという間に解決に至らせてくれました。本当に有り難いことだと感謝しています。私でさえ,分からないことが出てきたら,分からなくなったそのときになんとかしたいものです。私が院生だった三十数年前も,分からないことが出てきたら担当の大学の先生はすぐに研究室に戻って調べてきて解決に至らせてくれました。
 学校現場でも分からないことが出てきたら,子どもたちにとってはそのときになんとかしたいものです。時が過ぎれば過ぎるほど忘れ去ってしまいます。分からなくなったそのときに,その子のバイアスに対応できるバイアスを提供してあげられる環境を構成したいものです。