信濃の国からこんにちは

三崎隆です。私たちは『学び合い』(二重括弧の学び合い)の考え方を大切にしています。

降雪

 雪が降るときは,どんな雪かを見つめてしまいます。ぼたぼた雪かさらさら雪かによって,除雪の度合いが違ってくるからです。前者はぼた雪と分類され,後者はこな雪に分類されているようです。結晶は気温と湿度に相関関係があり,0から-4 ℃付近では角板,-4から-10 ℃付近では湿度が低いと角柱になり,-12から-15 ℃付近の高湿度では樹枝状になることが知られています。
 長野市で見ることのできる降雪は,ダイヤモンド・ダストのように舞っているという表現がぴったりのほど,落下途中で上昇し,またゆるやかに落下しまた上昇することを繰り返して降雪してきます。舞っているうちは風情がありますが,ぼた雪のようにぼたぼた降雪してきたら,翌朝の除雪を覚悟しなければならない積雪が見込まれます。雪国での生活は,このぼた雪の印象が強く残ります。

本当によく分かっていないとできないこと

 主に小学校低学年の子どもたちを対象として,科学に関する彼らのいろいろな素朴な疑問に答える電話相談室の番組があります。全国から専門領域のトップが集って子どもたちの質問に応えます。この冬休み期間中は特番が組まれているようです。小学館はこの冬休み期間中に,世界の歴史全17巻を無料公開しています。子どもたちのための様々な取組が有り難いことですが,大人が聞いたり読んだりしても多くの学びを得ることができて有意義な時間を過ごすことができます。
 科学に関する番組を聴いていると,子どもたちに分かりやすく説明することが難しいことがよく分かります。専門家が質問してきた子どもたちに,「分かる?」と尋ねると子どもたちは「はい」と答えてくれていますが,専門家の説明を分かる子どもたちも凄いと思います。時には,専門的な用語を使って説明するのですから,それを理解するだけでも至難の業です。素朴な質問ほど,答えるのが難しいとよく言われますが,まさにそのとおりです。
 相手に説明すること,特に小学校低学年の子どもたちに分かってもらえるように説明するためには,自分自身が本当によく分かっていないとできることではありません。英英辞典がありますが,特定の単語を別の平易な表現で分かりやすく説明したものです。それと同じことを,小学校低学年の子どもたちへの説明ではしなければならないのですから,大変な作業です。それも,そのときの質問に即座に対応しなければなりませんから,自分自身の中での言い換えを通して,メタ認知が起こります。
 その意味においては,ものごとを理解する作業というのは,自分自身のための’英英辞典’つまり言い換え辞典を作る作業をしていることであるとも言い換えることができそうです。アウトプット作業が物事を理解する上では欠かせないのです。

 

幸せな年に

 明けましておめでとうございます。今年もみなさまにとりまして幸多き1年になりますよう心から祈念申し上げます。新型コロナウイルス感染症が一日も早く終息し,一日も早く普段通りの生活を送ることができますよう心から願っております。そして,世界中のすべての子どもたちが幸せな年になりますように。

できることもたくさんある

 できないことが数多くありますが,その一方でできることもたくさんあるものです。みなさんは,どちらを大切にしようとしていますか?言い方を変えれば,話を進めようとするときにあるいは議論を始めようとするときにどちらを優先してないしはどちらを思わず語ろうとしていますか?自分に実害が及ぶことが懸念される場合には,おそらく前者のことが多いような気がします。それは無理でしょう,と。そんなことはできない,だれもやったことがない,前例がない,など理由はいくらでも見つかります。
 私は,できるだけ後者を語ることができるように心がけています。心がけているだけですから,それこそできないこともあり,人格の完成までにはまだまだであると自戒するところです。日々,精進です。確かにできないこともあるでしょうが,できることは少なからずあるはずで,たとえ1つしかなかったとしてもそれはできるわけですから,その1つに挑戦してみる価値はあるように思います。やってみなはれ,とよく言われます。
 全国各地のいろいろな学校の取組で,参考になるものがあれば,それに挑戦してみる価値はあります。それは,その学校だからできたんでしょ,ではないはずです。その学校がどのような試みをしてその結果を導き出したのかを分析した上で,それが自分たちにできるのかできないとしたらどうやったらできるようになるのか自分たちバージョンでできることがあるはずです。やってみましょう。
 今年はそのように思うことが多かった1年です。みなさまにおかれましては,どうぞ良いお年をお迎えください。令和3年がみなさまにとって幸多い年になりますように。

わからんかったらその人の責任にするしかない

 ある学会誌に,学生の意識調査の結果として,「わからんかったらその人の責任にするしかない」というプロトコルが掲載されていました。それだけを取り上げて議論することは慎重にしなければなりませんが,教育学系の大学に学ぶ一般の学生の意識の一端として,このような発話を残す文化はいつ形成されるものでしょうか。小学校入学の時からすでにこのような文化が形成されているのでしょうか。悲しくなります。
 いつどのように関して明らかなことは分かりませんが,間違いなく言えることは,義務教育後の集団内においてコンテンツ・ベースの社会的文脈の下で,一つ一つの社会的経験の積み重ねの中で形成されていった文化であることです。
 現代の教育学においては,初めての事物・現象に対して分からなくなる現象はごく当たり前に現れることが知られています。それは様々な学問的な背景の下で,多様な理解が成されることが次々に明らかにされてきています。それらへの対応は一人の人間で賄うことが極めて難しいことも知られるようになってきています。
 分からなくなる現象が現れた場合には,そこから脱却すべくもがき奮闘します。もがき奮闘する努力を認めてあげられる文脈が用意されているかどうかによっても,その分からなくなる現象の解決に至るかどうかが影響を受けます。もがき苦しんでも解決に至らない場合もあるでしょうが,それは分からなくなった本人の責任とその周りにいる人たちの責任とのバランスによって解決への道筋が付けられるように思います。
 分からなくなったらいつでもどのようなことでも誰にでも助けを求められる文脈を用意してあげる環境構成と,分からなくなったらいつでもどのようなことでも誰をも助けてあげられる文脈を用意してあげる環境構成が必要です。わからんかったらその人の責任にする前に,その集団の文化を変えてあげる努力をし続けたいものです。

この授業でいちばん大切なことは何ですか?

 「この授業でいちばん大切なことは何ですか?」と聞かれることがあります。みなさんなら,何と答えるでしょうか?私なら,間違いなく,「全員が目標を達成することです」と答えます。おそらく,この授業でいちばん大切なことを聞きたい場合には,教材や指導法,指導内容を期待していることではないかと推測できます。何を教えたいのか,どのようにして教えたいのか,そのために工夫したり開発したりした教材を求めているのでしょう。
 新しい学習指導要領が,小学校では本年度から中学校では来年度から全面実施となります。その学習指導要領では修得すべき資質・能力が大切にされますから,この授業で身に付けさせたい資質・能力が挙げられるかもしれません。
 しかし,教えるべき内容や修得すべき資質・能力が大切にされたとしても,それらが一部の子どもたちにしか修得されなかったとしたら,大切さが薄らいでしまうように思うのは私だけでしょうか。大切であることには変わりありませんが,いちばんと言われたらやはりそれらを全員が享受できることであり,全員が教えるべき内容を理解すること,全員が修得すべき資質・能力を身に付けることです。
 教える内容や修得すべき資質・能力が大切であったとしても,それが一部の子どもたちにしか理解されていない修得されていない状況であったとしたならば,いちばん大切だとは言えないものではないでしょうか。いちばん大切なことであるとしたら,全員に享受させたいと願うばかりです。

初めてのことに挑戦し続ける子どもたち

 初めてのことに挑戦する場合には,誰しも躊躇いがあります。不安もあれば緊張もします。それだけに,自分一人で考えて判断して行動に移す場合もありますが,誰かに相談することもあります。それを払拭する上では,個人的な文脈もさることながら,社会的文脈も大きな影響を与えているからです。
 そんなときに,あなたの判断が正しいと言われたら,幸せです。それも一番正しいよ,と言われたら躊躇いや不安などは一気呵成に吹き飛んでしまうでしょう。あるいは,一緒にやってみようよと言われたら,それも幸せです。一緒に歩んでくれることほど,心細い思いを吹き飛ばせて勇気づけてくれることでしょう。躊躇いを分かち合ってくれるからかもしれません。それだけに,相談相手というのは有り難いです。
 学校の授業は,子どもたちにとって毎日,毎単位時間が初めてのことへの挑戦の連続です。授業の最中に,これでいいのかなあと思っているそのときに,それでいいんだよ正解!と言われたり,どうしたらいいのかなあと多い悩んでいるそのときに,一緒にやってみようよとか言われりしたら,やる気が起きませんか?私にとってそんなときは,やってみてよかったなあと思える元気ともうちょっとがんばろうかなあと思える勇気とやる気をもらえて嬉しくなります。初めてのことに挑戦し続ける子どもたちに,そんなプレゼントをあげることのできる授業をしてみませんか?