信濃の国からこんにちは

三崎隆です。私たちは『学び合い』(二重括弧の学び合い)の考え方を大切にしています。

目が覚める言葉

 先日の"これぞ『学び合い』"の学校で授業をされた素晴らしい『学び合い』実践者の言葉に,はっと目を覚まされた思いです。その言葉は,
自分が得をする。
相手も得をする。
です。
 『学び合い』の考え方では,子どもたち同士で教えたり教えられたりする行為が随所に見られます。私はそれを,わいわいがやがやの表現で言い合わしています。その状況をご覧になったみなさまからは,一般的に次ぎようなご指摘を受けます。
 「教えてもらう子どもたちは得をするけれども,教える子どもたちは得をしないのではないですか?」と。
 以前,ある中学校の生徒のみなさまのある保護者の方から質問があったと言うことをある先生を通して聞いたことがあります。その質問は次のものです。
 「教えてあげると教えてあげた子が勉強ができるようになって高校に受かって自分が落ちるから,教えたくない」と。
 つまり,一般的な先に述べたように,教えてもらう側は得をするけれども,教える側は得せずに損をするという典型的な思います。果たしてそうでしょうか?
 冒頭で紹介した実践者の方の言うとおりであって,『学び合い』の考え方を使って授業をしていくと,教える子どもたちも得をしますし,教えてもらう子どもたちも得をします。まさに,相手も得をするし自分も得をするのです。相手が得をするのはご理解いただけると思うのですが,なぜ自分が得をするのでしょうか。
 それは,相手に教えるということは自分が本当によく分かってない限りできない行為だからです。中途半端に理解している状況で分かったつもりになって相手に教え始めると,相手から質問されて答えられなくなって困ることがあります。「ちょっと待って。もう一度考えてみるから」となりかねません。つまり,教える行為を取ることによって,実はその子自身の中で分かり直しが始まっているのです。いわゆるメタ認知と言われる現象です。その過程で,より広くもより深くも学ぶことになって,実はもっと良く,本当に良く分かるようになるのです。そのこと自体が,その子にとっての得となります。
 冒頭の先生のように,そのことをしっかり理解できている状況下で,『学び合い』の考え方を駆使しておられる点が実に秀逸です。その先生の一言によって,私自身も改めて目を覚まされた思いでいっぱいです。